対談Ⅰ 「京都、そして伝統産業」
京都から今まさに学ぶべきは「信用」の本質、
そして今後の日本に求められる「成熟」である
浜: (エコノミストとしての)私の立場から京都をどう見るか、そしてグローバル革新塾としてどう見るかを考えると、2つ言えることがあると思いますね。
1.金融の世界が京都から学ぶべき信用の本質
金融の根源的な軸となっている概念は、信用。金の貸し借りは信用している者同士の間でしかやり取りされない。京都、あるいは日本における伝統産業の世界は「お互いがお互いに信用しあうこと」によって結ばれている。今まさに金融の世界も京都の伝統産業の世界から学ぶべきことが多いのではないか。一番根源的なところを学ぶべきなのではないかと思いますね。
2.これからの日本に求められるのは「成熟」
今の日本に必要なのは「成『熟』戦略」。世界でこれほどの成熟度を達成した状態でグローバル経済の時代を迎えなければならない国はどこにもない。日本の前にはもう誰もいない。「成熟」とどうやって付き合っていくかが日本経済運営の最大のテーマだと思いますが、まさに京都、伝統産業ほど成熟度に満ち溢れている世界はない。成熟を追求すべき日本の経済社会にとって、京都は極めて大きいですね。
「切磋琢磨」という高品位の競争が持続につながる
村山: 金融には表面的に見ると競争がある。ところが、京都では競争はあまりそぐわない。競争していると長く続くのか、互いにつぶしあって途切れてしまうのではないか、それよりもグループの中で切磋琢磨しながら技を磨き、良いものを作っていくほうが将来に繋がっていくという考え。つまり「棲み分け+切磋琢磨」の世界。
浜: 「切磋琢磨」は本当に高いレベルで互角に争い、お互いに非常に高いところに登っていく、非常に「高品位の競争」と言うべきもの。相手をつぶすのではなく、ぶつかり合いの中から自分がより高いところにいける場を与えてもらっているという感覚が「切磋琢磨」が持っているもの。その感覚で事業展開出来る人は上手に「棲み分け」が出来るということではないか。それを京都の伝統産業はDNAとして身につけてこられたのではないか。
文化は成熟社会にとって決定的に重要。
「京都魂」で文化を世界に主張していく「陰謀」を
村山: 「成熟社会」である日本で文化の果たす役割について、どうお考えですか?
浜: 決定的に重要。日本は幸いにして、ものすごく高くて創造性に満ち溢れたものを持っている。それは日本の前に誰もいない中で、グローバルジャングルを進んでいく上で最も頼りになる道標であり、生存の糧となる。非常に懸念されるのは、「成長戦略」がうまくいかないときに「文化戦略」という言葉が出てくること。日本の文化的な素養をもっと活用しないといけない、という発想になっていくと、日本の素晴らしい文化を矮小化するものになってしまう。
村山: 知恵を絞って公的なものに頼らず、ビジネスとしてやらないと文化は続いていかない。
京都には、色んな文化の層がある。1.王朝文化 2.寺社仏閣の文化、そして3.伝統産業の持っている文化。これはビジネスに乗った文化なので存続してきた。
浜: 京都魂、京都的な心意気と、体制に組み込まれていくことは非常に反していると思う。伝統産業、そして京都の文化を世界に向かって主張していくときに必要となるのは、「陰謀」だと思う。「戦略」は非常にきな臭く、ギスギスしていて、品位のない言葉。「陰謀」は非常にたくましい。高品位の切磋琢磨と何かを一緒に企んでいく芳しき文化が一緒になると、もう誰も敵わないパワーが炸裂してくる。






